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乳歯を集めてストロンチウム90の調査をしたルイーズ・ライス医師と息子のエリックさん=伊東さん提供

 米国などが太平洋のマグロ漁場で繰り返した核実験の実態を追う映画監督・伊東英朗さん(64)は最新作であえて、米国本土での核実験の健康被害を描いた。核兵器禁止条約第3回締約国会議が開かれる米国では、現地の大学で上映会もある。なぜ「米国人の健康被害」なのか。

 映画は「サイレント・フォールアウト」。ユタ州で核爆発を目撃し、身内を亡くした「風下住民」や、ネバダ州やマーシャル諸島で核実験が繰り返され、放射性降下物(フォールアウト)が全米に広がったことが描かれる。

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映画「サイレント・フォールアウト」から。米国・ネバダ核実験場の核実験=伊東英朗さん提供

 「核実験の破壊的な結果を描くと共に、現状を変えようとする人々の物語でもある。私たちはこの映画から多くを学べる」。締約国会議期間中の5日に米国・コロンビア大で上映会を企画するNGO「核時代平和財団」のイバナ・ヒューズ代表(48)は話す。

 監督した伊東さんは元々、愛媛県のテレビ局のディレクターだった。2004年の取材で、その半世紀前に太平洋のビキニ環礁であった米国の水爆実験の実態を知る。乗組員23人が被曝(ひばく)し、死者も出た「第五福竜丸」以外にも多くの船が放射性降下物を浴び、延べ992隻の漁船がこの年、放射線の検出されたマグロを廃棄していた。伊東さんは高知県の元漁船員や遺族らの証言を何度も番組にし、映画も作ってきた。

 その伊東さんがなぜ、米国本土の核被害に焦点を当てたのか。

 映画のハイライトは、子ども…

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